2026年10月開始「インボイス経過措置(70%控除)」への移行と実務への影響について

掲載:2026/06/12

支払調書イメージ1

はじめに

本記事では、今後の業務運用において極めて重要となる法改正「インボイス制度の経過措置見直し」について解説します。 タイトルにある通り、2023年に導入されたインボイス制度の経過措置(80%控除)が2026年(令和8年)10月に終了し、次段階である「70%控除」へと移行します。 当初の計画(一気に50%へ縮小)から変更され、急激な負担増を抑えるための見直しが国税庁より示されました。 移行に伴い、日々の経費精算や取引先との実務において新たな対応が必要となります。要点を解説していきますので実務にお役立てください。

もくじ

インボイス制度の基本概念

新段階の解説に先立ち、前提となる消費税の仕組みを改めて整理します。 企業は、事業活動において消費税の「預かり」と「支払い」を行っており、国への納税額は以下の数式で算出されます。

納める消費税 = 顧客から【預かった消費税】 - 取引先に【支払った消費税】

この、支払った消費税を差し引く手続きを「仕入税額控除」と呼び、多重課税を防ぐための重要な仕組みとなっています。 2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、この仕入税額控除を適用するためには、国が認めた「適格請求書(インボイス)」の保存が必須となりました。

登録事業者との取引: 正式なインボイスが発行されるため、支払った消費税の全額を控除可能。

免税事業者(未登録)との取引: インボイスが発行されないため、原則として消費税を控除不可(その分、自社の税負担が増加)。

これにより、取引先が免税事業者(個人事業主やフリーランス等)である場合、実質的なコスト増加につながるという課題が生じることとなりました。

「経過措置」の新スケジュール

免税事業者との取引において、控除を全面的に不可とした場合の市場への混乱を回避するため、段階的にルールを厳格化する「経過措置」が設けられています。 最新の改正に基づき、スケジュールは以下の4段階(7・5・3割控除)へと移行します。

2026年10月1日以降の2年間は、これまで認められていた80%控除が「70%」へと縮小されることになります。

変更に伴う具体的な影響

財務コストの増加
インボイス未登録のフリーランスに110,000円(税込、うち消費税10,000円)の業務委託を行った場合、これまでの実質的な自社負担は2,000円(80%控除)でしたが、今後は3,000円(70%控除)へと増加します。 この差額が全社的に累積した場合、利益の圧迫要因となります。

経理システム等の設定変更
会計ソフトにおける税区分を「免税80%」から「免税70%」へと切り替える必要があります。 特に9月決裁・10月払いなど、期間を跨ぐ取引の処理において厳格な管理が求められます。

経理チェック体制の強化
自社負担額の増加に伴い、提出される領収書が適格請求書であるかどうかのチェック体制が全社的に厳格化されます。

実際の経理業務で求められる対応

実務においては、以下の3点について注意が必要です。

領収書(レシート)受領時の「登録番号」確認の徹底
旅費交通費、懇親会費、消耗品費等の支払時に受領する領収書に、「Tから始まる13桁の番号」が記載されているかを確認します。 記載がない場合は、経費精算システムにおいて「インボイス対象外」等の適切な区分を選択して申請する必要があります。

経費精算の早期提出(取引時期の判定)
国税庁の指針に基づき、今回の控除率の判定は「代金を支払った日」ではなく、原則として「商品の引渡しを受けた日」または「役務(サービス)の提供が完了した日」(課税仕入れを行った時期)を基準とします。 そのため、9月中に納品・完了した取引の精算が10月以降に遅延すると、経理処理の判定を誤る原因となります。 経費精算は溜め込まず、当該月内に速やかに提出するよう周知するようにしましょう。

取引先との適切なコミュニケーションと相談
外部ベンダー等の窓口を担当している場合、相手方の登録状況を再確認しましょう。 ただし、インボイス未登録を理由とした一方的な取引停止等は、下請法等の法令に抵触する恐れがあります。 契約条件の見直しが必要と判断される場合は、個人の判断で動客せず、速やかに上司や経理部へ相談してください。

支払調書イメージ2

免税事業者や個人事業主で求められる対応

免税事業者や個人事業主と取引をしている会社は、今回の70%控除への移行をはじめ今後の段階的な引き下げは営業戦略において重要な節目となります。 免税事業者を継続される場合は納税義務や事務負担は発生しませんが、発注側(弊社含む)の税負担が増加するため、競合他社(登録事業者)との比較において選定上の制約が生じる可能性が否定できません。 課税事業者(インボイス登録)を選択される場合は納税および申告の実務負担が生じるものの、弊社側は全額仕入税額控除が可能となるため、従来の取引条件を維持しやすくなります。 免税事業者が登録する際には「2割特例」などの激変緩和措置も用意されています。 今後の対応については、税理士や商工会議所等の専門機関へ相談して検討するようにしましょう。

今回の経過措置変更に関するよくあるご質問(FAQ)

Q. 2026年10月以降、インボイス(登録番号)のない請求書で請求した場合、取引を打ち切られてしまうのでしょうか?

A. インボイス未登録であることを理由に、一方的に即座に取引を停止することはないでしょう。ただし、経過措置の変更に伴い取引先の税負担が段階的に増加することは事実であるため、今後の新規案件の発注や契約更新のタイミングにおいて、取引条件(価格面など)を交渉する場面が出てくることが予想されます。

Q. なぜ「50%控除」ではなく「70%控除」に変更されたのですか?

A. 当初の国の計画では、2026年10月より一律で「50%控除」へ縮小される予定でした。しかし、免税事業者や発注側企業の急激な負担増加を緩和するため、国税庁(税制改正)による激変緩和措置の見直しが行われました。その結果、まずは2年間のクッション期間として「70%控除」の段階が新設され、より緩やかに制度が移行することとなりました。

Q. 2026年9月に納品した業務の報酬を、10月に請求・受給する場合はどちらの控除割合が適用されますか?

A. 則として「70%控除」ではなく、従来の「80%控除」が適用されます。今回の控除割合の判定は、請求書の発行日や代金の支払日ではなく、「役務(サービス)の提供が完了した日」または「商品の引渡しが完了した日」が基準となるためです。9月中に業務が完了しているものであれば、精算や支払いが10月以降になっても80%控除の対象となります。そのため、請求書等には「業務完了日(納品日)」を明記することで、スムーズな経理処理に繋がります。

Q. 今からインボイス(適格請求書発行事業者)に登録した場合、どのような手続きが必要ですか?また、確定申告は大変になりますか?

A. 税務署へ登録申請書を提出することで登録が可能です(e-Taxによるオンライン申請も可能です)。登録後は、日々の売上にかかる消費税を計算して確定申告(消費税の申告)を行う必要があります。事務負担や税金負担は増えることになりますが、現在、小規模事業者向けには納税額を大幅に抑えられる「2割特例」などの負担軽減措置が継続・新設されています。具体的なシミュレーションや手続きについては、管轄の税務署、税理士、または地域の商工会議所などの専門機関へご相談いただくことをお勧めいたします。

Q. 免税事業者のまま活動を続ける場合、取引先への請求書の発行方法等で変更すべき点はありますか?

A. 免税事業者のままであっても、請求書の様式自体を大きく変更する必要は原則ありません。ただし、登録番号(Tから始まる13桁の番号)がない請求書となりますので、取引先側で「経過措置(70%控除)」の対象として識別して処理されます。請求書内に「インボイス未登録(免税事業者)」である旨を付記しておくとよいでしょう。。

おわりに

制度やルールの変更に伴い、初期段階においては運用の戸惑いや確認の手間が生じることが予想されます。 経費精算の手続きや領収書の判定において不明な点がある場合は、些細なことでも適正な実務運用を行うために、会社の経理に確認をしていくようにしましょう。

まずはシステム・ワークスにきいてみませんか!

インボイス経過措置に関するシステムのご相談はこちらから

支払調書・法定調書・謝金システムに強い株式会社システム・ワークスでは、会計パッケージ選定支援、システムコンサルティング、ソフトウェア構築サービス、データセンター運用サービス、ITとビジネスを駆使してお客様のシステムを成功に導くお手伝いをしています。